Adjust ignite tokyo 2025 vol5

Adjust Ignite終盤には、「【特別対談】世界に挑むスタートアップから学ぶアプリグロース戦略」と題して、スタートアップのアプリグロース戦略に焦点を当てた特別対談が行われました。

本セッションでは、コロナ禍を経て急成長を遂げ、海外アプリストアで1位を獲得したインバウンド旅行者向け必須アプリ「Payke」で脚光を浴びる株式会社PaykeのCEO古田奎輔氏と、テキスト通話という革新的な切り口で国内ランキング1位を獲得し、海外展開も開始した「Jiffcy」が注目を集める株式会社Jiffcy(旧 株式会社穴熊)のCEO西村成城氏による初の対談を実現。全く異なるジャンルのアプリでありながら、アプリプラットフォームを最大限に活かした唯一無二のUIで世界に挑む両氏の経験は、新たな発見に満ち溢れていました。比類なきユーザー体験の創出、グローバル展開という視点から、これまでの成功と失敗、そして今後の野望が語られました。MCは、Adjust Sales Leadの高橋 将平が務めました。

セッション冒頭、MCの高橋が両氏の輝かしい経歴が紹介。株式会社Paykeの古田氏はForbes Asiaの「30 Under 30」に選出され、大谷翔平氏らと共に「世界を動かす日本人」にも名を連ねています。Paykeは台湾、香港、マカオ、韓国でアプリストア1位を獲得し、現在では韓国から日本を訪れる旅行者の10人に1人が利用するほどの浸透ぶりです。一方、株式会社Jiffcyの西村氏は「未来を創るスタートアップ大賞」を受賞し、Jiffcyは日経トレンディ「2025年ヒット予測100」で10位にランクインするなど、その注目度の高さが伺えました。

このセッションには、複数のオフレコトーク(このオフレコトークにこそ新しいアイディアやきづきが詰まっていた)が含まれていたため、セッション内容のうちほんの一部しかこのブログに書ききれないということが非常に悔しいところです。

Payke(株式会社Payke CEO 古田奎輔氏)の戦略

古田氏は19歳で沖縄に移住し、2014年に沖縄初のITスタートアップとしてPaykeを創業。コロナ禍の困難を乗り越え、外国人向けアプリ開発に注力してきました。 Paykeは、商品のバーコードをスキャンすると、その商品の詳細説明や口コミがユーザーの母国語(7カ国語対応)で読めるアプリです。日本を訪れる外国人観光客に広く利用され、サービス開始から10年で600万人以上のユーザーを獲得。コロナ明けには月間10万〜15万ダウンロードを記録し、その99%が外国人ユーザーです。ユーザー獲得の最大の特徴は、広告費をほとんどかけないオーガニック成長です。SNSで旅行者が「Paykeが便利だった」と投稿することで自然に拡散されています。

ビジネスモデルはB2Bが中心で、日本の企業向けに広告、リサーチ、コンサルティングなどのインバウンドソリューションを提供。最近ではユーザー課金型のB2C事業も展開しています。 特筆すべきは、Paykeが保有する一次データです。新宿周辺の外国人分布、国籍、訪問店舗、売れ筋商品(商品名まで)といった詳細なデータをリアルタイムで把握しており、これはこれまで取得困難だった外国人消費のトレンドを可視化する貴重な情報源となっています。

Paykeのビジネスモデル。インバウン事業者とインバウンド客を繋ぐ、プラットフォームビジネスを目指すという

アプリストア1位獲得の秘訣は、初期のFacebook投稿による大規模なバズがきっかけであったと語られました。その後は、SNSでの見栄えを意識したコンテンツ(例:スキャンする様子を映すことで視聴者の目を数秒間引きつける)をマイクロインフルエンサーに投稿していただく戦略を確立。さらに、「日本旅行に持っていくべきアプリ5選」のように、Payke以外のアプリも交えて紹介していただくことで、広告臭を抑えつつ自然な拡散を促しました。海外展開では、対象国の言語でのアテレコ(吹き替え)がリーチに効果的であることや、EU圏への配信開始後、ターゲット外であったにもかかわらずSNS経由でオーガニックなダウンロードが増加した事例が紹介されました。

Jiffcy(株式会社Jiffcy CEO 西村成城氏)の戦略

西村氏はシンガポールとタイでの9年間の海外生活を経て、大学在学中に学生起業。これまで20以上のWebサービスやアプリを開発し、その失敗談も公開しています。Jiffcyは「テキスト通話」という、これまでにないコミュニケーション体験を提供するアプリです。通常の電話のように相手を呼び出し、応答すると画面がテキストチャットに切り替わり、入力した文字がリアルタイムで一文字ずつ表示されます。これにより、音声を出さずにまるで対面で話しているかのような臨場感のある会話が可能です。

入力した文字がリアルタイムで一文字ずつ表示され、まるで対面で話しているかのような臨場感のある会話を実現

相槌を打つように文字を打つことで、誤解が生じやすいメッセージングとは異なり、時間軸を加えることで感情のニュアンスも伝わりやすくなります。 このアプリは特に聴覚障がい者にとって画期的なソリューションとなり、彼らが初めて「電話」をかける体験を可能にしました。 

西村氏は、メディアへの露出についての一風変わったエピソードを披露してくださいました。それは、「未来を創るスタートアップ大賞」へのノミネートが発端となり、各社から取材依頼が舞い込んだ時のこと。当初は取材を断っていたものの、一年後に改めて依頼を受けた時には承諾したそうです。これが、「一年間温めたネタ」としてメディアの思わぬ食いつきを生んだと分析。テレビ出演(特に「めざましテレビ」)はオーガニックなダウンロード増加に繋がったといいます。さらにテレビで取り上げられた内容がYahoo!ニュースなどの記事になりバズることで、大きな影響があったと述べました。

世界に挑むスタートアップの今後の展望

西村氏は、テキスト通話はあくまで手段であり、究極の目標は「テレパシーのようなコミュニケーション」の実現と語りました。物理的な距離による誤解やコミュニケーションの制約を取り除き、コミュニケーションの可能性の解放を目標にしていくといいます。将来的には、一方が声で話し、もう一方がテキストで話すといった多様なコミュニケーション形式も視野に入れているそうです。

古田氏は、日本以外での利用拡大を目指し、海外の商品データベースを拡充し、日本人が海外旅行に行った際や外国人が他国を旅行した際にも利用できる「メッシュ」なサービス展開を準備しています。

さらに豊富なユーザーデータを活用し、各国籍のユーザーがどんな商品を好み、何を求めているかを分析。そのデータに基づき、帰国後も欲しい商品を購入できるような越境ECネットワークの構築を目指しているそうです。

両氏は、それぞれのユニークなアプローチでアプリの成長を牽引し、今後の日本、そして世界のアプリ市場を牽引していく存在として、その野望と戦略に大きな期待が寄せられました。

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